市長へ学生たちがプレゼン! 行政のDX推進プロジェクト ~奈良県橿原市での「臨地実務実習」~
産業界や社会との連携が強化された実践的なカリキュラムのもと、本学では学生全員が2年次から4年次にかけて約4ヵ月間、様々な企業や団体に分かれてインターンシップ「臨地実務実習Ⅰ~Ⅲ」を行います。
今回、情報工学科4年生の学生6名が、約6週間にわたって奈良県橿原市の行政の現場でDXを推進するインターンシップを実施。中間報告会では、開発したAIチャットボットについて市長と副市長にプレゼンテーションを行いました。
■インターンシップの概要
今回のインターンシップでは、学生たちは橿原市の行政実務の課題を解決するためのDX推進の一環として、職員向けのQ&Aや例規情報を参照して質問に答えるチャットボットを開発することになりました。
橿原市には多種多様ルールやマニュアルがあり、職員はそれに則って仕事をしています。しかし、そこに書いてある内容が長く複雑で、しかも掲載場所が統一されておらず分かれているなどの事情があり、職員間で各制度担当課への問い合わせが絶えません。
学生たちは、LLM※1によるRAG※2を使えば問い合わせと回答を平易な自然言語で行うことができるのないかと考えていましたが、橿原市の職員はインターネットから隔離されたネットワーク環境で執務しており、またLLMに関するセキュリティ的な課題もあって、閉域でかつセキュアなLLM対話環境を必要としていました。
そこで、学生たちは、橿原市が閉域接続しているクラウドのAPI※3を使ったチャットボットをつくり、様々な情報をもとに回答を生成する実証実験を行うことにしました。
※1 LLM:大規模言語モデル
※2 RAG: 大規模言語モデル(LLM)による生成に、外部の独自の情報を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術のこと
※3 API:異なるソフトウェアやアプリケーション間で機能を共有するための仕組み
<チャットボットの画面>
■市長・副市長へのプレゼンテーションの内容
学生たちは、インターンシップ終了の1週間ほど前に報告会という形で、橿原市の市長と副市長に今回開発した2つのチャットボットについてプレゼンテーションを行い、実際に市長と副市長に試していただきました。1つは既存のLLMフレームワークを使ったもの、もう一つは、学生たちが独自に開発したWebアプリケーションです。
実演時点では開発途中のため、既存のLLMフレームワークを使ったものは、ハルシネーション※4等の課題が残っており、独自のWebアプリケーションの方は、バックエンドとフロントエンドの接続が完了していなかったのですが、それでも技術の可能性を感じることができる発表になりました。
※4 ハルシネーション:AIが誤認や論理の矛盾を含む事象や事実とは異なる情報をつくり出してしまう現象
■市長からのコメント
今回の実習(インターンシップ)に参加された学生の皆さんに、市長室で成果の発表をしていただきました。チャットボットに尋ねたいことを入力すると、橿原市が公開している例規情報を参照して、情報を答えてくれるなど、今後のAIの可能性を感じることができる発表でした。
奈良県橿原市 亀田忠彦市長
亀田市長を囲んで記念撮影
【参加した学生たちの感想(一部抜粋)】
- 実習を通して「自分で調べて問題を解決する」というスキルが身についたことも、今後の仕事において大きな武器になると考えています。技術は日進月歩で進化していくため、常に新しい情報をキャッチアップし、自ら学び続ける姿勢が必要です。今回の経験を踏まえて、今後も自分で考え、問題を解決する力を磨き、技術的な知識を深めると同時に、実践的なスキルを高めていくことで、自分のキャリアをさらに発展させていきたいです。
- 市役所という企業とは全く異なる環境での働き方を体験できた今回の経験を自身のキャリア選択における判断材料として活用し、今後後悔のない選択をできるようにしていきたい。
- チームでのコミュニケーションスキルや協力の大切さも実感しました。この経験を通じて、リーダーシップやチームワークを発揮しながらプロジェクトを進める能力が、今後のキャリアにおいても重要であると再認識できました。将来的には、技術者としてだけでなく、チーム全体を率いてプロジェクトを成功に導く役割も担えるような人材になりたいと考えています。
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